前回の続き。日本国債の年限毎のリターンを確認する。
期間は1999/12/30-2024/10/31。算術平均リターン(月次リターンを平均し、12倍して年率化したもの)と幾何平均リターン(月次リターンをつなげて年複利利回りとしたもの)を表示する。
算術平均リターン(実線)では、年限が長くなる(=リスクが高くなる)につれてリターンが高くなっている。ただし上昇ペースは単調ではなく、8-9年あたりでリターンの上昇ペースは鈍化している。10年超は20年まではリターンの増加は緩やかで、20年超は再び加速していた。
そして幾何平均リターン(点線)でボラティリティドラッグ(分散ドレイン)の影響も考慮すると、20年付近がピークとなり、その後は年限を伸ばすとリターンが減少していく結果となった。
年限を延長する→リターンが上昇する との関係は、今回の期間では成立しなかった。
債券のリターンは、キャリー(利回り要因)、ロールダウン(時間経過により年限が短期化し、利回りも変化することによる要因)、キャピタル(金利変化要因)、コンベクシティ(金利ボラティリティ要因)、個別要因に分解できる。
要因別に分けたリターンを表示する。
各年限ですべての要因の合計リターンが各年限の算術平均リターンとなる。幾何平均リターンも表示した。
この期間では、キャリーとロールダウンが主たるリターンで超長期ではコンベクシティの影響が大きい結果となった。
算術平均(全合計)、幾何平均(点線)の差がコンベクシティ分に一致しているように見える。これは、ラフに見ればリスクと年限が比例していることで、分散ドレインとコンベクシティリターンがほぼ同一であることによる。リスクと年限の関係が変化すれば、この関係は成立しない。
この期間は金利が低下しているため、キャピタルリターンの影響を受けている。金利低下の影響を除いたリターンも確認する。キャピタル分を除いたリターンを表示する。
コンベクシティの分は分散ドレインで相殺すると考えると、実質的には18年付近でリターンはピークをつけ、18年超は、デュレーションの長期化がリターンを上昇させていない。
要因としては、鶏と卵ではあるが、超長期のイールドカーブが”平坦”すぎ、キャリー、ロールダウンリターンが超長期ではデュレーションに見合うだけ獲得できていないように見える。
再び、キャピタル分も含めて検証する。
年限の長さが必ずしもリターンの上昇をもたらさない結果を確認したが、投資においては、(期待)リターンが高ければよいわけではなく、やはりリスクも考慮に入れるべきだ。
年限毎の算術平均リターンとリスクの比を表示する。
8年でピークをつけ、その後はリターンがリスクほどは高まらない形状となっている。
全期間では、年限の長期化→リスクの増加→算術平均リターンの上昇は見られるものの、その効率、年限を伸ばしたことによる追加のプレミアム(リターン)については、8年で頭打ちであり、より長期の年限については、リスクほどはリターンがない結果
この傾向は、期間ごとに変化した可能性もあるため、リスクと同様に5年毎に区切った期間ごとに表示する。
まず、2005-2009年を除いて、リスクリターン比率は年限を伸ばすことで上昇し、その後、緩やかに低下していることが見て取れる。
2005-2009年についても、年限を伸ばすことでリスクリターン比率はむしろ低下しており、短期ゾーンの様子が異なるだけで基本的な特徴については変化が無い様だ
また、リスク対比のリターンがピークをつける年限は、期間にもよるが、10年までのどこかの年限となっていた。
言い換えると、短期に対する長期年限のプレミアムが存在しない、または存在していても小さい状況となっている。これは、長期の債券が相対的に割高ということもできる。
より長い年限の債券投資は報われないのか?
次回は、長期債のプレミアムについて確認する。