2024年12月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ1bp低下、5bp上昇、3bp上昇し0.57%、1.13%、1.95%で終了


金利の上昇に合わせて月初から円安が進み、日銀の利上げの到達水準が上昇。12月は据置きの可能性が高く、1月か3月利上げが織込みであったものの、19日の決定会合後の総裁会見では、今後の見通しについて「もう1ノッチ」ほしいとし、賃金上昇の不透明感、新大統領下での米国政治の不透明感なども理由とされた。ただ、大統領就任の1月、春闘の時期を考慮すると3月利上げも怪しくなり、短期までは金利低下。年末にカレンダーベースの国債発行予定は超長期減額、5年増額と概ね事前見通しどおり。

カーブは4年超はツイストフラット
フォワード金利は円安もあり長期までは上昇。超長期は、一応発行減要因?で低下

2024年11月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ17bp上昇、11bp上昇、6bp上昇し0.59%、1.08%、1.92%で終了

 

  

 トランプ再選を受けてドル高となりドル円も中旬までは円安が進み、日銀の利上げ期待が上昇。12月か来年1月の利上げをほぼ織り込み。
下旬の40年入札は弱め。24年度補正予算後の発行計画は短期国債のみ2.4兆円増額も利付債は据置き。

カーブはベアフラット
フォワード金利政策金利パスの影響が大きい短中期を中心に上昇

デュレーションの長期化は長期期待リターンを上昇させるのか?(4)

 前回の続き。日本国債の長期債のプレミアムを確認する。

 

  • 長期債のリスクプレミアム

 まずはプレミアムの推移を見てみる。期間は1999/12/30-2024/10/31

 リスクリターン比率がピークをつけやすいゾーンの代表として、5年債を選び、1年債に対するプレミアムの推移を検証する。
このために、5年債を買い、1年債を同金額売るイメージで、5年債のリターン-1年債のリターンの5年(60カ月)移動平均を表示する。

5年債のリターン-1年債のリターンの5年移動平均

 基調としては、低下基調であり、金利の上昇した2020年以降はマイナスになってはいるものの、多くの期間ではプレミアムはプラスであった。

 プレミアムが金利変化に依存する可能性もあるため、デュレーションニュートラルとするよう5年債を買い、1年債を5倍の金額売った場合に同様の5年移動平均リターンを表示する。

5年債のリターン-1年債のリターンの5年移動平均 デュレーションニュートラ

 見方にもよるが、2006年から2007年の利上げ期に0付近まで低下しているものの、多くの期間で+0.80%=80bp程を維持していたことがうかがえる。

 5年債は、年限を延長したことによるプラスのプレミアムをもたらしていたことが確認できた。

 

同様のことを5年債に対する20年債で確認する。

20年債を買い、5年債を同金額売るイメージで、20年債のリターン-5年債のリターンの5年(60カ月)移動平均を表示する

20年債のリターン-5年債のリターンの5年移動平均

 2016年から2021年(2016年+5年)は、2016年のマイナス金利政策による大幅なブルフラット化(超長期金利の低下幅>短期金利の低下幅)の影響を受けて大幅なプラスとなっているが、2022年以降は金利上昇を反映してマイナスとなっている。

先と同様にデュレーションニュートラルとするため、20年債の元本に対して元本を4倍分5年債を売った場合の5年移動平均リターンを表示する。

 

20年債のリターン-5年債のリターンの5年移動平均 デュレーションニュートラ

 マイナス金利政策の追い風を加えても平均は▲0.02%とほぼ0であり、マイナス金利政策がなければむしろマイナスのプレミアムの時期が通常である可能性さえある。

 

  • ほかの年限のプレミアム

 このような結果は1年、5年、20年が特別だったわけでは無い。長期債の対短期債として、対1年債でのリターンから計算した算術平均リターン/リスク比率を表示する。

年限毎の対1年債 リスクリターン比率

 やはり10年より年限の長い債券は、リスク調整後では報われない結果になった。

 

  • 掲題の問いへの回答

純化すれば、
デュレーションの長期化は長期期待リターンを上昇させるのか?

との問いに対しては、今回の期間の状況を見る限りは上昇させない、が答えとなりました。

 

要因としてはいくつかあるかと思いますが、超長期債は日銀を除けばALM目的で購入する投資家がメインプレーヤーであり、利回りによらずALMや規制対応などで購入を余儀なくされることもあるため、適切な?プレミアムを反映できていな可能性があります。


もちろん、金利の低下時は、超長期債のほうが短期債に比べてより大きなキャピタルゲインを獲得できるため、超長期債の投資が無意味という結論は、あまりにも短絡的すぎです。

デュレーションの長期化は長期期待リターンを上昇させるのか?(3)

 前回の続き。日本国債の年限毎のリターンを確認する。

 

  • リターン

 期間は1999/12/30-2024/10/31。算術平均リターン(月次リターンを平均し、12倍して年率化したもの)と幾何平均リターン(月次リターンをつなげて年複利利回りとしたもの)を表示する。

年限毎のリターン

算術平均リターン(実線)では、年限が長くなる(=リスクが高くなる)につれてリターンが高くなっている。ただし上昇ペースは単調ではなく、8-9年あたりでリターンの上昇ペースは鈍化している。10年超は20年まではリターンの増加は緩やかで、20年超は再び加速していた。
 そして幾何平均リターン(点線)でボラティリティドラッグ(分散ドレイン)の影響も考慮すると、20年付近がピークとなり、その後は年限を伸ばすとリターンが減少していく結果となった。

 年限を延長する→リターンが上昇する との関係は、今回の期間では成立しなかった。

 

  • リターンを要因別に分解する

 債券のリターンは、キャリー(利回り要因)、ロールダウン(時間経過により年限が短期化し、利回りも変化することによる要因)、キャピタル(金利変化要因)、コンベクシティ(金利ボラティリティ要因)、個別要因に分解できる。

要因別に分けたリターンを表示する。

年限毎リターンの要因分解

各年限ですべての要因の合計リターンが各年限の算術平均リターンとなる。幾何平均リターンも表示した。

 

 この期間では、キャリーとロールダウンが主たるリターンで超長期ではコンベクシティの影響が大きい結果となった。
 算術平均(全合計)、幾何平均(点線)の差がコンベクシティ分に一致しているように見える。これは、ラフに見ればリスクと年限が比例していることで、分散ドレインとコンベクシティリターンがほぼ同一であることによる。リスクと年限の関係が変化すれば、この関係は成立しない。

 この期間は金利が低下しているため、キャピタルリターンの影響を受けている。金利低下の影響を除いたリターンも確認する。キャピタル分を除いたリターンを表示する。

 

年限毎リターンの要因分解 キャピタルリターンを除く

 コンベクシティの分は分散ドレインで相殺すると考えると、実質的には18年付近でリターンはピークをつけ、18年超は、デュレーションの長期化がリターンを上昇させていない。

 要因としては、鶏と卵ではあるが、超長期のイールドカーブが”平坦”すぎ、キャリー、ロールダウンリターンが超長期ではデュレーションに見合うだけ獲得できていないように見える。

 

  • リスク調整後リターン

 再び、キャピタル分も含めて検証する。

 年限の長さが必ずしもリターンの上昇をもたらさない結果を確認したが、投資においては、(期待)リターンが高ければよいわけではなく、やはりリスクも考慮に入れるべきだ。

 年限毎の算術平均リターンとリスクの比を表示する。

年限毎のリターン/リスク

 8年でピークをつけ、その後はリターンがリスクほどは高まらない形状となっている。
 全期間では、年限の長期化→リスクの増加→算術平均リターンの上昇は見られるものの、その効率、年限を伸ばしたことによる追加のプレミアム(リターン)については、8年で頭打ちであり、より長期の年限については、リスクほどはリターンがない結果

この傾向は、期間ごとに変化した可能性もあるため、リスクと同様に5年毎に区切った期間ごとに表示する。

年限毎のリターン/リスク  5年毎

 まず、2005-2009年を除いて、リスクリターン比率は年限を伸ばすことで上昇し、その後、緩やかに低下していることが見て取れる。
2005-2009年についても、年限を伸ばすことでリスクリターン比率はむしろ低下しており、短期ゾーンの様子が異なるだけで基本的な特徴については変化が無い様だ
また、リスク対比のリターンがピークをつける年限は、期間にもよるが、10年までのどこかの年限となっていた。

言い換えると、短期に対する長期年限のプレミアムが存在しない、または存在していても小さい状況となっている。これは、長期の債券が相対的に割高ということもできる。

 

より長い年限の債券投資は報われないのか?

次回は、長期債のプレミアムについて確認する。

 

 

デュレーションの長期化は長期期待リターンを上昇させるのか? (2)

 前回の続き、日本国債の年限毎のリスク(ボラティリティ)を確認する。

 

 リスクはリターンのボラティリティとする。キャピタルリターンは概ね修正デュレーション×金利変化であり、イールドカーブの変動が年限によらない(パラレルシフト)とすると、年限とリスクは比例する。

 

  • リスク

 1999/12/30-2024/10/31の月次収益率から算出し年率換算したものと、それを年限で除したものを年限毎に表示する。

年限毎のリスクとリスク/年限(デュレーション)  10年まで

 10年までを確認すると直線にも見える。細かく見ると5年まではリスクの増加ペースは遅く、むしろ年限の延長ほどリスクは増加していないようにも見える。一方で、8年ほどまではリスクの増加ペースが加速し10年付近で頭打ちのように見える。

 

年限毎のリスクとリスク/年限(デュレーション)  全年限

 10年以降は、20年までは年限の増加に比例してリスクが増加するものの、20年超ではリスクの増加が加速している。

 

 この傾向は時期によって異なる可能性もあるため、2000年から5年ごとに区切って確認する。2020年以降は、2024年10月まで

年限毎のリスク/年限(デュレーション)  5年毎

 正直不思議ではあるが、概ねどの期間でも傾向は似ており、先物ゾーンである7年付近までは年限の延長に伴ってリスクの増加ペースは加速しているように見える。20年付近までは横ばい、20年超はリスクの増加ペースは再加速している。
2005-2009年、2020-2024年はともに金利上昇期と大きなショック(世界金融危機、コロナショック)を含むが、7年付近で年限の延長に対してリスクの増加ペースが加速している。
2015-2019年は、イールドカーブコントロール政策により10年までのリスクが抑えられている影響が強く出ている。

 

  •  なぜ、このような形状になるのか?

 仮説ではあるが、基本的には年限が短いゾーンのほうが債券発行量、投資家が多様なことで流動性が高く、年限が長いゾーンは投資家が少なく流動性が低いことを反映しているのかもしれない。
また、短期ゾーンは金融政策、長いゾーンは長期の日本の成長率と金利の期待変動率を反映しやすいことから、過去、動きの小さい日本の政策金利変化を反映しているのかもしれない。

金利変動が単純に金利水準に比例する傾向があるのであれば、より金利の高い年限の長いゾーンはより高いリスクとなることもあるのかも知れない。

 

 投資という意味では、リスクだけ考えると10年未満では5年程度が年限対比でリスクが小さく、また、20年超は年限のわりにリスクが高いため割に合わないように見える。

 

次回はリターンについて確認する。

デュレーションの長期化は長期期待リターンを上昇させるのか? (1)

 

 株式投資の場合は、企業を決めればその株式を売買すれば良いが、債券投資の場合は、国債に投資する、と決めるだけではどの債券銘柄を売買するは決定できない。国債では短期債から超長期債まで様々な種類(年限)があり、各年限の債券は共通の性質とそれぞれの特徴を持つ。ここでは結局どの年限が一番"良い"のか、また、その要因を確認してみる。

 なお、タイトルは米国国債を対象にした古いレポートに倣っている。

 

 債券の年限毎の特徴といっても、例えば満期まで10年の国債を購入した場合でも、5年後には満期までの期間は5年となっており、年限は時間の経過とともに変化してゆく。

 今回は各年限の特徴を確認するため、毎月初に特定の年限の債券を購入し、月末に売却、同時に元の年限の債券を改めて購入することを繰り替えすことを考える。また、利付債はゼロクーポン債の組み合わせであるので、ゼロクーポン債に投資する。

前置きが長いが、検証期間などについては以下のとおり

 

  • 検証データ

 期間は1999/12/30-2024/10/31の298カ月=24年10カ月。データは日本証券業協会の売買参考統計値の国債価格を利用し、年限毎のイールドカーブを構築した。
 そこから毎月末に残存1-30年(40年)の債券(ゼロクーポン債)に投資した場合の収益率を計算、毎月のリターンをつなげることで、約25年にわたりその年限の債券に投資した場合のリターンとする。
 金利はすべて連続複利金利とする。このときゼロクーポン債では年限=(修正)デュレーションである。このため、年限の長期化は期待リターンを上昇させるのか。について検証する。

 

  • 対象期間について

 この約25年間は、ゼロ金利政策、解除、量的緩和政策、包括的緩和政策、量的質的金融緩和、マイナス金利導入、イールドカーブコントロール政策、2024年のマイナス金利解除など、
金融引締め/緩和の局面を含み、VaRショック、世界金融危機(リーマンショック)、バーナンキショック、コロナショックなど多くの混乱期や、インフレおよびデフレ、海外中銀の引締め緩和サイクルを含む。
 金利の推移は、期間中に低下と上昇を含み、10年金利は期初対比では1%ほど低下している。

 

  • 累積リターン

 まず、毎月繰り返し投資した場合の収益曲線について、年限=5年、10年、20年の場合について確認する。

年限毎の累積収益曲線(1999年12月末に 1 投資した場合)

5年債は、約25年間で20%超のリターンであるが、20年債では100%超のリターンを達成している。ただし、リスクは20年債のほうが明らかに高く、5年債はリスクが小さい

 

より年限が長い=デュレーションが長い債券への投資が、より"良い"リターンをもたらすのか?一番"良い"年限はどれか?というのが今回の検証目標となる。

 

次回はリスクについて確認する。

2024年10月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ5bp上昇、6bp上昇、8bp上昇し0.41%、0.97%、1.86%で終了

強い雇用統計を受けて米金利は年内の利下げ幅織込みを急速に剥落させつつ、加えて11月の大統領選後の財政拡大懸念から財政プレミアムを織り込む形で大幅上昇(10年は3.7%から4.3%)。
国債金利もこれにつれて大幅上昇。142円から152円と円安も進みこちらも早期利上げを意識させた。
ただ、スティープ化は、衆議院選挙で与党の自民公明両党が大敗し、財政拡張懸念で米国と同じく財政プレミアムを織り込み40年は16bp上昇。

カーブはベアスティー

フォワード金利政策金利パスの影響が大きい5年までと、超長期を中心に上昇

英国然り、債券自警団が日本でも活動するのか。