2026年8月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ20bp上昇、14bp上昇、12bp上昇し1.69%、2.99%、3.97%で終了

 前月末の後場引け後に行われた決定会合後の記者会見では、総裁が利上げペース加速の可能性に言及し、従来の「半年に一度の利上げペース」からの加速が意識されたほか、利上げの到達点も上昇した。また、月末から月初にかけて実施された為替介入が日米協調介入であったことを受け、米国から利上げを要請されているとの思惑が強まり、短期フォワードが上昇した。これにより、据え置き予想だった9月利上げを90%織り込んだ

 ドル円は月初の為替介入により一時155円台まで円高となったものの、その後は月を通じて円安基調となり、月末には160円台を回復した

 補正予算と一本化され、従来のシーリングが撤廃されたことで大幅な増額が懸念された概算要求は、140兆円規模と概ね事前想定に近い水準となった。ただし、金額が明示されていない項目も残っており、需給懸念から超長期ゾーンは甘く推移した

米国では引き続き大型起債が継続し、ジャクソンホールではFRB議長がタカ派的と解釈可能な講演を行ったものの、米国金利は10年4.75%を中心とするレンジでの推移となった。月中にベッセント財務長官が超長期米国債の買い戻し額を20億ドルから少なくとも40億ドルへ倍増すると発表したことで米国30年金利の上昇は一時抑制された

金利カーブは全年限で上昇し、ベアフラット。フォワードもゼロカーブと同様の形状となった。

BEIは短期が大幅に上昇し、ベアフラットの形状となった。

2026年7月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ11bp上昇、11bp上昇、9bp上昇し1.49%、2.85%、3.85%で終了

 6月末に公表された骨太の方針が需給懸念を高めたことで、金利は月初から上昇基調で推移。10年金利は単利で2.9%に近づき、30年金利は4.0%を上回る場面もあった。しかし、10日に財務大臣がGPIFを利用した金利上昇けん制とも取れる発言を行ったこと、さらに14日の20年入札が非常に強い結果となり、不明分が過去対比で大きかったことから「GPIFの直接入札ではないか」との思惑が広がり、金利は一転して低下した。10年金利はピークから単利で約30bp低下した

 月後半は、中東情勢の再緊迫化に伴う原油価格の再上昇、円安の継続を背景にインフレ期待が再び上昇し、金利も再度上昇した。全国CPIは国内物価のボトムアウト基調を示し、月末の東京CPIも予想を小幅に上回った。決定会合は事前に据え置きがリークされていたものの、会合初日にドル円が為替介入と思われる動きを見せたため、一部で利上げ観測も出た。しかし実際には据え置きとなり、引け後の会見はタカ派ともハト派とも取れる内容だった。深夜には再度大幅な円高が進行し、FRBによるドル買い観測も聞かれた

 FRBは金利を据え置いたものの、9名中3名の理事が利上げを支持。ECBも2.25%で据え置いたが、9月利上げを示唆する内容で、市場は利上げを織り込んだ。欧米金利は月初から大幅に上昇し、原油価格上昇、社債の大規模発行、財政政策期待などが上昇要因となった

 日本株は、これまで急速に上昇していた半導体関連銘柄が急落し、日経平均とTOPIXの乖離が拡大。米国株もAI・半導体関連銘柄を中心に下落し、米国のクレジットスプレッドは徐々に拡大した

 金利カーブは全年限で上昇し、パラレルシフトとなった。40年金利の大幅上昇はフローに沿った動き以外の説明がつきにくい。フォワードもゼロカーブと同様の形状となった

 BEIは短期が大幅に上昇し、ベアフラットの形状となった

資産は過去から変わらないのか? 日本債、日本株、米国債、米国株の戦後のリターンの確認

 国内金利が上昇し、国内債券のリターンが7年連続でマイナスとなる一方で、利回りは「数十年ぶりの水準」といった債券関連のニュースを耳にする機会がようやく増えてきた。同時に、株式投資を推奨する話題も依然として多い。

 こうした状況の中で、過去の円建て資産のリターン推移を確認し、日本債との関係を中心にその特徴を整理した。過去の事象が再び繰り返される保証はないものの、これまで経験のない環境を振り返り、起こりうる事象として認識しておくことは有益である可能性がある

 対象は日本と米国の債券および株式とした。日本債・米国債については、1〜10年の各年限に均等なエクスポージャーを持つラダーポートフォリオを構築し、修正デュレーションは5.5年、月次リバランスとした。期間を通じてリスク水準を一定に保つことで、日米間の比較が可能となるようにしている

 全資産はトータルリターンで評価し、株式などで一部データが存在しない期間については推定値を用いた。日本債については、1961年までは加入者引受電電債のカレント銘柄の推定リターンを用い、修正デュレーションが5.5年となるようにスケール調整した。1977年までは加入者引受電電債を、1978年以降は日本国債を使用している

日本債

 2000年以降の日本債の収益率は平均で1%弱にとどまり、「自国建て資産でローリスク・ローリターン」という一般的な説明と整合的な結果となっている。ここ数年はリターンがマイナスで推移しており、オルタナティブ投資など“安定したリターン”とされる資産へ資金が流入している状況にも納得感のあるリターン環境といえる
 ただし、こうした低収益の傾向は、超低金利政策・ゼロ金利政策が採用された以降(あるいは金利自由化以降、バブル崩壊以降、日本の人口が減少に向かった時期とも重なる)に特徴的なものであり、2000年以前とは様相が大きく異なる
 2000年以前の日本債は、年率で安定的に10%弱のリターンを示していた。数年に一度マイナスとなる年はあったものの、翌年にはプラスに戻り、複数年連続でマイナスが続くことはなかった。マイナスとなった年を振り返ると、政策運営の遅れや不作為が表面化したタイミングと重なると解釈することもできる
1960年:池田首相の積極財政と政府要請による山際日銀総裁の低金利維持政策が物価上昇を招き、結果として利上げに追い込まれた
1973年:田中首相の積極財政と、政府を含む国内外からの低金利要請を受け佐々木日銀 総裁が緩和的な政策を続けていたが、オイルショックにより物価が急騰し、大幅な利上げが必要となった
もっとも、こうした解釈は確証バイアスによってそのように見えているだけの可能性がある

日本株と日本債

 日本株は、バブル以前の高度経済成長期や、そこからバブル期へと至る期間においては堅調に推移しており、「財テク」という言葉が広く使われたことにも納得できる動きとなっている
 一方で、2000年以降は状況が大きく変わった。世界金融危機(GFC)が生じた2008年を代表として、年次で大幅なマイナスとなる局面が多く、株式のボラティリティは高まった。もっとも、2013年以降は非常に堅調な推移となっており、年次リターンだけを振り返ると、高度経済成長期やバブル期と似たような状況にも見える。
見方を変えれば、バブル以降が特殊な期間といえるかもしれない

 バブル期以前の日本株と日本債の関係を見ると、一方が下落する際にはもう一方がカバーするような変動が見られ、株式を主軸とする投資家にとって日本債はヘッジ資産として分散効果をもたらす存在だったといえる
 ただ、以降は日本債の変動が小さくなり、日本株の下落時に日本債が上昇している年もあるものの、ヘッジ、分散効果が十分あったとは言い難い

米国株と日本債

 米国株は、数年に1度、年間で−20%程度の下落が生じるものの、平均的には高いリターンを示しており、その強さはやはり目を引く。また、日本の投資家にとってはヘッジなしの場合、ドル建てのリターンとは逆方向に動く年もあるなど、為替変動がパフォーマンスに与える影響は無視できない

 日本債との比較では、バブル期までは日本債は多少リターンが低いものの安定的にプラスを維持し、米国株は高いリターンを得られる一方で時折大きな損失が生じるという関係にあった。そのため、両者を組み合わせることで分散効果が働き、ポートフォリオ全体の安定性が高まっていたといえる
 しかし、2000年以降は状況が一変した。米国株が圧倒的なパフォーマンスを示し、日本債はほとんど存在感を失った。米国株の独擅場となり、日本債はリターン面で比較対象にならないほど差が開いた期間が続いている

米国債と日本債

 米国債(ドル建て)の収益率は、概ね金利水準に応じて推移しているように見える。1980年から2008年までは長期的な金利低下基調が続いたこともあり、高い収益率が実現した。2022年の大幅なマイナスは、インフレを「一時的」と判断した政策対応の遅れから、急速な利上げを余儀なくされた年であり、債券リターンがマイナスとなる局面は国を問わず同様の背景を持つのかもしれない

 また、米国債にも、現在の日本債のようにリターン水準が低く推移する期間が存在したことが確認できる。低水準期は永続するものではなく、周期的に繰り返される可能性もある。日本債も回復することがあるかもしれない

米国債と米国株

 米国株と米国債の関係を見ると、米国債はヘッジ資産として機能し、米国株が大幅に下落する局面では米国債が上昇する傾向が確認できる。ただし、2022年はこの関係が崩れた特異な年であった
 このような株債の同時下落は、過去のオイルショック期でも見られなかった。2022年当時は高インフレが株債の相関変化の背景にあると説明されることもあったが、年次リターンのみから同じ結論を導くのは難しいと感じられる
より精緻に理解するためには、高頻度データを用いた株債の相関分析や、インフレ率・政策金利との同時推移を確認するほうが適切かもしれない

債券リターン

 日本債のリターンが超低金利政策の採用以降低迷し、米国債も低金利期にはリターンが伸び悩むのは、収益の相当部分がキャリー要因によって決まることを考えれば自明といえる。そこで、各年の前年末時点の10年金利と当年のリターンの関係を確認しておく

青色は日本国債、オレンジ色は利付引受電電債

 見方次第という気もするが、期初時点の水準とその年の収益率には正の関係があると考えられる


2026年6月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ4bp上昇、4bp上昇、7bp上昇し1.38%、2.74%、3.76%で終了


中東戦争の終息を織り込む形で原油価格が90ドルから70ドル割れまで下落する中、BEIは20bp低下した。一方、ドル円は徐々に円安方向で推移し、月初の総裁講演ではインフレの上振れリスクに言及があったことから、10年金利はレンジ内での推移となった。

月中の決定会合では1.0%への利上げが既定路線とみられていたものの、政府関係者から利上げに難色を示すコメントが出たことで、今後の利上げに対するハードルの高さとともに、ビハインド・ザ・カーブへの懸念が意識されやすい状況となった。

決定会合では予定どおり1.0%への利上げが決定され、国債買い入れオペについては、現行の四半期ごとに2,000億円ずつ減額する方針を27年度以降は停止し、月2兆円程度の買い入れとすることが決定された。内容は事前にリークされていたものの、減額停止が正式に決まったことで超長期ゾーンには一時的に買いが入った

しかし、下旬に経済財政諮問会議の資料および骨太の方針が公表され、2040年までに官民合計で実質370兆円の投資額が示されたことを受けて金利は反転上昇した。政府の投資額は毎年10兆円程度と想定されたものの、財源が明確に示されなかったことに加え、金融政策への言及が政府による利上げ抑制姿勢と受け止められたことが金利上昇要因となった。

米国は新議長の初めてのFOMCとなり、フォワードガイダンスが撤廃され、また各種タスクフォースが物価指標等について検討することが示された。また、ECBはインフレ懸念を理由に2.25%への利上げを決定し、こちらも見通しを示さず、コミットしないとの姿勢を示した。


為替はドル高。金価格は大幅下落となった。

カーブは20年ゾーン以降を中心に上昇でベアスティープ。フォワードはツイストフラット

2026年5月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ2bp低下、13bp上昇、15bp上昇し1.34%、2.70%、3.69%で終了

 中東情勢は楽観と悲観を繰り返したものの、中旬に向けて終戦期待が大幅に後退し原油価格が上昇していたことや、補正予算に伴う国債増発への警戒感から10年金利は単利で2.8%まで上昇。その後は、米国イラン間で60日間の停戦合意に進展がみられたとのニュースで原油価格が下落し、米国金利が低下する中で上昇幅を縮小した。40年金利は30年金利対比で上昇幅は限定的となり小幅に利回りが逆転した。40年入札がやや強い印象ではあったが月を通じて需要があるような利回り変動となった。
また、補正予算とは別に、つなぎ国債として償還財源を指定した複数年管理の国債を発行するとのニュースが下旬に出たことで需給懸念が再度強まり、超長期ゾーンの金利上昇要因となった
 次回の利上げは6月が基本シナリオとして織り込まれ、米国からも利上げ支持と考えられるコメントがあったものの、政府が利上げに懸念を示しているとの見方もあり、6月利上げのスキップシナリオも一部念頭に置かれていた模様

 ドル円は為替介入で円高になったもののその後はじりじりと円安が進み160円近くまで反発
 海外金利はまちまち。英国金利は、首相の退陣観測が高まり、財政規律が懸念され金利上昇。株価は堅調に推移した


カーブは長期ゾーン以降を中心に上昇でベアスティープ。フォワードはツイストフラット

2026年4月 国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ3bp上昇、15bp上昇、12bp上昇し1.36%、2.57%、3.53%で終了

中東情勢の緊張と緩和のヘッドラインで上下したものの、原油価格の高止まりや為替介入を警戒しつつ進む円安を受けてBEI主導で金利が上昇
原油価格は100ドル/バレル付近で変動が大きい状況

決定会合は政策金利を据え置いたものの、3名が利上げを支持し、また、展望レポートでは日銀版コア指数の最終年度2028年見通しが2.2%と明確に2%を超えており(1月時点の最終年度2027年度は2.1%見通し)、タカ派的な姿勢と受け止められ、次回6月利上げがメインシナリオとなった。ただ、タカ派的な見通しを持ちながら現会合であえて据置く理由については明確ではなく、政府からの利上げ阻止圧力がうかがえるとの声も聞かれた
月中の20年、30年入札はともに無難から堅調な結果となり、年度初からか超長期ゾーンには一定の需要が確認された

米国では、ピークアウト懸念が生じていたAI・半導体需要について、引き続き強さが確認されたことや、好決算から半導体、AI関連銘柄が上昇し米国株は史上最高値を更新。同じくAI・半導体株が牽引し日経平均も6万円に到達した。一方でNT倍率が急速に上昇するなど、TOPIXの上昇は限定的

FRBは金利を据え置き、声明文では利下げバイアスを維持したものの、3名の理事が緩和バイアスの文言に反対(1人は利下げを主張)。今会合でパウエル議長の任期は終了するものの、政治攻撃からの中銀の独立性を守るとの理由で、理事としての退任は否定した
ECBは日本時間30日(4月最終営業日)の引け後に据置きを決定。今後については見通しを示さなかった
また、同じく引け後に日銀財務省は為替介入を実施。ドル円は160円台から155円台まで急騰

カーブは長期ゾーンを中心に上昇。フォワードはツイストフラット

2025年度の国債市場

日本国債 2年、10年、20年ゼロ金利はそれぞれ55bp上昇、88bp上昇、115bp上昇


25年4月に米国が関税の大幅引き上げを表明し、先行きの不透明感から円金利は低下。関税率の交渉や時期、日本を含めた各国経済に与える影響などを踏まえて日銀は利上げ姿勢を一時後退させるとの思惑が強まった。しかしながら、その後関税率が当初表明された水準ほどにはならないとの見通しが高まるにつれて利上げ期待も回復し、長期金利も上昇基調に転じた。
欧米は利下げサイクルの中で日銀が利上げサイクルであるにもかかわらず、再び円安基調が維持されており、これに対応するべく日銀に対する利上げ観測が高まるなかで、金利先高観から金融機関の国債買い控えが生じ、特に超長期金利は急速に上昇。財務省は超長期国債の発行を短中長期ゾーンに移すなど、需給改善対応を講じたものの、金利上昇は止まらない状況となった。

9月には石破首相が辞意を表明し、次期高市首相による財政拡張懸念からさらに金利上昇が加速した。

26年3月には25年6月に続き再び米国/イスラエルがイランを攻撃し原油価格が急騰。インフレ懸念が高まり欧州金利は明確に利上げ織り込みに転じ、米金利も一時利上げを織り込み想定利下げ幅を縮小したことから上昇した。


年限間では、15年は銀行によるアセットスワップのアンワインド、アウトライトの売り、25年はオフザランの低クーポン債の入れ替えなどから割安化が一時進んだ。
低金利時代に円債をアンダーウェイトにしていた海外投資家のウェイト復元はフォロー材料。オランダ年金のDBからDCへの変更なども一時話題になった。また、20年国債先物に流動性が復活し一定の建玉も安定化した。

年度を通じて、日銀の利上げ速度、ターミナルレート、インフレ、財政政策、通貨安、資源高がドライバーだがどれも金利上昇要因

カーブ全体ではスティープ化

株式は引き続きAI関連が注目されて上昇したが、年度の後半は発達したAIが既存のソフトウェア産業を陳腐化せるとの懸念から横ばいに転じ、中東情勢の緊迫化により急速に軟化した。

金価格は、ドル離れを中期的なナラティブとしつつ、米国の利下げを短期的に織り込み、銀やプラチナなど貴金属にも上場モメンタムを伝搬させたが、3月に米国の利下げ織込みが剥落したことで暴落。ただし年度では大幅な上昇を記録した。

プライベートクレジットなどのノンバンクローンは、一部の大型ファンドで、事前に設定した金額以上の解約請求が殺到し、払い戻しができないことから懸念が強まり、一部の識者からは崩壊開始を示唆されたが、26年4月時点では他の資産や実体経済に伝搬している様子は見られない


昨年度に続きグローバリズムの反転が続いているものの、その速度が市場の見込みを超えている